Devconnectで開催されたInvisible GardenとEthereum ArgentinaでBuildしてきた
こんにちは、FractonのKeitaです。
Fractonでは、主にIncubation周りのサポートやその他色々を担当しています。
先日、アルゼンチンのブエノスアイレスで開催されたDevconnectに参加し、その期間中行われた2つの大きなbuilder向けの催し/competitionであるInvisible Gardenと Ethereum Argentina Hackathonに参加してきました。
Devconnectは、Ethereum Ecosytemで最も大きなConferenceで、世界中から1.4万人を超えるBuilderが世界130カ国から一挙に集います。
※Devconnectそのものについては、すでにいろんな方がまとめていると思うので、本記事では詳しく扱いません。
Invisible Gardenは、Ethereum ecosystemの中で一定知られたBuilder Residensyプログラムの一つですが、日本語でまとまった情報が意外と少ないと感じたため、今回は、主に日本人のBuilderやFounder志望の向けに体験を書いてみたいと思います。
併せて、Devconnec内で開催された大きなHackathonの一つであるEthereum Argentinaにも参加し、一定の結果を残すことができたので、本稿後半では本大会についても触れます。
目次
Invisible Gardenとは/Programの内容
Invisible Garden Hackathonについて/結果
Ethereum Argentina Hackathon in Devconnectについて/結果
全体の感想
Invisible Gardenとは
Invisible Gardenは、世界中から選抜された約50名のEthereum ecosytemのビルダーが集うDev Residencyで、Ethereum Foundation やArbitrum をはじめとしたEthereumの中核にいる組織やオピニオンリーダー、メンター陣によって支援・共催されています。
基本的にDevcon/DevconnectなどEthereumの目玉カンファレンスのタイミングに合わせて開催され、今回は Devconnect in Buenos Aires と併せて実施されました。
DevconnectのOpening Talkでは、Ethereum FoundationのCo-Executive DirectorのTomaszから、Invisible Gardenについて “Ethereum EcosystemのベストPop-up City”と紹介されていました。
Invisible Gardenの基本構成
Programはざっくり言うと次の3つで成り立っています。
3週間の共同生活
Hackathon
Mentoring / 講義
以下、それぞれ簡単に紹介します。
応募・共同生活について
応募について:
Invisible Gardenの参加者は、Ethereum上でビルドしてきたビルダーが対象で、合計約50名ほど。応募にあたっては、GitHubの提出、取り組む予定のProductの説明、2本の動画提出などが必要で、それらを総合して合否が判断されます。
滞在先は、Buenos Airesの中心地・Palermoにあるホテルで、ここで3週間共同生活を送ります。
参加時の注意点として、参加が許可されても必ず宿泊部屋が確保されるとは限らないことです。実際、自分が締切前日に応募したときにはすでにAccomodation Free枠が満室で、Programへの参加許可は出たものの部屋についてはWaitlistに回されました。
おそらく、ただこのWaitlistの順番を待っていたら部屋は確保できなかったと思います。保証はなにもなかったのですが、「現地で直接自分の熱意を伝えればなんとかなるという謎の自信」を頼りに、片道切符で当時住んでいたマレーシアから約35時間かけてアルゼンチンへ向かいました。
結果的に、到着日に運営メンバー自分の熱意を理解してもらえたこともあり、偶然1枠空いた部屋に滑り込む形でProgram期間中は無料で宿泊できました(運が良かったです)。
主な参加者:
参加者の属性は、スマートコントラクト開発者、Ethereumリサーチャー、AIエンジニア、暗号学研究者など複数分野に渡りますが、基本的に長年のCSバックグラウンドや開発経験がある人が大半で基礎力の高さは共通している印象でした。
アジアからの参加者は自分以外ほぼゼロで、地理的な要因もあり割合としてはラテンアメリカ勢がマジョリティ、ついでUS、アフリカという感じでした。特にラテンアメリカの参加者は、いい意味で力の抜けたEasygoingな人が多く、期間全体に渡って非常にintimateな雰囲気で居心地は最高でした。
余談:
本題からずれますが、アルゼンチンに到着して2日目にいきなり1週間ほど高熱でダウンする洗礼を受けました。原因は、冬明けのアルゼンチンと直前まで住んでいたマレーシアとの気温差(8度 vs 30度)で、無謀にも半袖短パンで乗り込んだことが一番の原因でした。
当時は現地人に教えてもらった現地の病院に緊急で駆け込んで、なんとか安価で薬を手に入れ、戦線に復帰しました。
これよって多少なりHackathonでのスタートダッシュに出遅れましたが、今回期間中に参加した2つのHackathonの結果については後述します。
Mentor/講義について
MentorはEthereum ecosystemを代表する技術者を中心に構成されています。
参加者の中には、サイトに掲載された顔ぶれを見て応募を決めた人も少なくなかったと予想しますし、自分もその内の1人でした。
メンターは大きく「常駐してプロダクトの壁打ち相手になる人」と「講義を担当する人」に分かれています。
メンタリング(壁打ち)のタイミングは基本的に自由で、会場近くにいるメンターを勝手に捕まえてそのまま相談するスタイルです。どのメンターもこちらが1質問すると10返ってくるような濃度で安心感がありました。
今回参加した2つのHackathonでは、データの暗号化+安全な方法での伝播を前提にしたProduct(詳細は割愛)を作っていたのですが、特にencryption/decryption面でアドバイスが必要だったので、ZK/暗号学分野のSpecialistであるJseamに集中的に相談しました。
彼は自分ひとりのために何時間にもわたる質問ラッシュに親身に応えてくれました。時に一緒に技術的な箇所の解決法をリサーチしてくれたり、まるで同じチームの一員のような距離感でサポートしてくれました。
講義について:
講義については、暗号学からゲーム理論、分散ストレージ、AIの推論モデル、EthereumのCore Protocols、DAO Governanceの統計的分析まで、実に幅広い分野をカバーしています。Program全体の指針として「土台となる基礎理解を疎かにしない」方針が一貫して徹底されており、講義の半数以上は数式レベルまで踏み込んだ内容でした。(これは他のResidencyと少し異なる点かもしれません)
Invisible GardenのHackathonについて
Builder Residencyのため、Hackathonと、ProductのDemo Dayがあります。
今回のHackathonではEthereum Foundationと並んで、メインの資金提供スポンサーがArbitrum DAOだったため、Hackathonでは Arbitrum Stylus を使用することが条件 でした。
評価項目は、MVPの技術的完成度、アイデアの独自性、Impact、そしてDemo Dayでのプレゼンの出来が、メンターによる評価/投票によって総合的に決まります。
評価項目:
Originality & Relevance (30%)
Technical Implementation (30%)
Impact & Usefulness (30%)
Presentation & Communication (10%)
Arbitrum StylusではRustやC系言語を使ってWASMコントラクトを書けるのですが、今回のHackathonではRustで最終的にコントラクトを書くことが必須 だったため、最終的な実装をRustで行いました。
自分も同じチームの相棒(メキシコ人)もRustの経験はほとんどなかったので、まずはロジックをSolidityで一度書いて挙動を固め、その後StylusのテンプレートとCLIを使ってRust実装として書き直す、という流れで進めました。参加者向けに提供されていた資料やドキュメントがとても手厚かったこともあり、大きく詰まることなくMVPまで作り切ることができました。またここでの経験は、後述するEthereum ArgeinaのHackathonでも大きく役立ちました。
結果:
結果的には、Programの全参加者の中で 1位 という形で終えることができました。
期間中は、まわりとの開発面での経験値の差を感じる場面の方が多かったので、この結果は予想の斜め上という感じでした。ただ振り返ってみると、ideaの想像力の面で少し他と比べて自分に分があったこと、また相方と距離感近く対話を続け、着実に毎日前進できたことがこの結果に繋がったと思います。
Demo day後のClosing Ceremonyでは、前述したEthereum FoundationのTomasz、Kevin Owocki(Gitcoin Founder)、Julian(Octant Founder)などEthereum ecosytemを代表するfounderとのセッションがありました。
特に昔から尊敬していたKevin Owockiから、Demo Day後にプロダクトへポジティブなフィードバックをもらえたことは、その後の大きな励みになりました。
Ethereum Argenina Hackathonと結果
上記のResidencyと並行して、Devconnect会場内で開催された「Ethereum Argentina Hackathon」にもビルダーとして参加してきました。こちらはDevconnect参加者を対象にした大規模なHackathonで、世界中から約220チームが参加しました。
提出物は、プロダクトのデモ動画やピッチデック、ビジネスモデルなどで、一次審査を通過したプロジェクトのみがステージでのプレゼンに進めます。
プロダクトのコンセプト自体はInvisible Gardenで固まっていたため、今回は主にアーキテクチャーのブラッシュアップ、新しいtech stackの採用、当初のミニマムな機能を超える新しい機能実装などに取り組みました。
一次審査を通過した後は、会場でのプレゼンテーション審査に進みました。会場はDevconnect内ということもあり、とにかく規模がデカく、ステージ上からの景色は圧巻の一言でした。
最終的な結果は、プレゼンテーション後、約2週間の細かいコード審査を経て発表されました。
結果:
結果として、こちらのHackathonでも、目玉であったScrollのTrackで
1st Prizeを獲得することができました。
加えて、Golem Foundationが主導する分散型StorageのArkiv Trackでも Best Use case Prize を受賞しました。
(※プロダクト名はメキシコ人のTeammateの当時の意向とノリで提出したもので、内容と深く関係ありません。)
自分はHackathonそのものを、「自分の頭で描いたプロダクト/コンセプトを実際に形にし、他者の反応を確かめる場」として捉えています。
その意味で今回、同じコンセプトで挑んだ2つの異なるHackathonの両方で1位を取れたことは、いまの感覚や方向性が大きくズレていないことを確認できたという意味で、良い機会になったと捉えています。
全体の感想
最後に、今回のDevconnectでの1ヶ月間のResidensyとHackathon参加を通して感じたことを短めに。
まず全体を通して、ブエノスアイレスまで来た以上「手ぶらで戻ることだけはできない」状況だったので、一定の結果を残せたことについては、まずは「ほっとした」という感じでした。
帰路を絶ってリスクを取ること自体を過度に肯定するつもりはないですが、行くかどうかの二択なら、外に出た先でしか得られないものがあるのも事実です。腹が決まり、結果を出さざるを得ないPressureのある環境は、いい薬になります。
とはいえ、HackathonでのPrize獲得はあくまで最初の小さな通過点でしかなく、Startupとしての成功を一歳約束するものではないです。実際に使われるモノとして、世に価値を提供しきるところまでやり切らない限り、その意味はほぼ0だと思います。今回評価してくれた人や応援してくれた人の期待を裏切らないよう、改めてゼロからの気持ちでビルドに取り組みます。
Invisible Gardenについて:
またInvisible Gardenについては、Ethereum ecosystemで本気でビルドしたい人、そしてEthereumやCryptography、AIなどの技術について基礎から解像度を深めたい人にとって、非常におすすめできるProgramです。
彼らが大切にしている「技術の土台を疎かにしない」姿勢は、短期的な成果につながりにくいものの、その分希少であり、長期的に価値のある取り組みだと思いますし、だからこそ多くのEcosytemの優秀なメンターや講師が無償でコミットしているのだと思います。
また、集中してビルドに向き合える環境が整っているため、「一気に開発を進めたい」「本気でやれる仲間を見つけたい」という人にとっては、最適な場のひとつだと思います。自分自身、ここで 今後も共にbuildを続けていける仲間に出会うことができました。
今回のDevconnect期間中、時間を共にした沢山のBuilder達、Residensy/Hackathon運営、メンター陣、Sponsorの全員に心から感謝しています。
そして、業務を続けながらこの機会へのチャレンジを後押ししてくれたFractonのメンバーにも、改めて深く感謝申し上げたいです。
読んでくださりありがとうございました。
Fracton, Keita

















