Ethereumのブロックスペースを売買するETHGasとは?
ETHGasとは何か
2025年末に大型調達を公表したETHGasについて今回の記事では扱います。
ETHGasは一言でいうと「Ethereumのブロックスペースを、先物商品へと変換する市場インフラ」です。
彼ら自身は、中央の板取引と、非カストディの担保コントラクトを組み合わせたハイブリッドな取引所として自らを位置づけています。CLOBで売り手と買い手をマッチしつつ、担保はスマートコントラクトにロックし、提案者の不履行をスラッシュで補償する設計です。
そもそもEthereumにおけるブロックスペースとは
Ethereumのブロックスペースは、ざっくりいうと各ブロックに載せられる計算量とデータ量の枠のことです。トランザクションはガスを消費し、ブロックにはガスリミットがあります。
EIP-1559以降、手数料は大きく分けてベースフィーとチップに分解されています。ベースフィーはプロトコルが需給に応じて調整し、ブロックが目標サイズより混んでいれば次ブロックで値上がる、といった制御で需給価格の自動調整”行っています。チップは、バリデータに「あなたの取引を優先して入れる動機」を与えるための役割です。
Preconfirmationとは
Preconfirmationは、ブロックが提案される前に、提案者またはビルダーが「その取引を入れる」「その順で実行する」といった保証を与える仕組みの総称です。
ここで、“inclusion preconfirmation”と“execution preconfirmation”は別物として扱われます。前者は「入る保証」、後者は「順番や結果まで含む保証」です。
ブロックスペースの取引
CLOB + 担保スマコン
ETHGasの公式ドキュメントでは、ETHGasは「ブロックスペースのコミットメントとベースフィー自体を取引する市場」であり、中央のCLOBと非カストディ担保コントラクトを併用するハイブリッド構造だと説明しています。
この設計の意味はシンプルで、ブロックスペースは本来プロトコル内で自動的に競り落とされるだけだったものを、「将来のスロットに対する権利」へ切り出し、金融商品のように
事前に価格発見する
予約する
転売する
を可能にすることです。
売買してるものの中身
ETHGasが提示するブロックスペースコミットメントは大きく3つの型に分かれます。
A. Whole Block Commitments
Whole Blockは、特定スロットのブロック全体、概ね約36Mガス相当を買い手が占有し、シーケンシング権も得るという設計です。これは「そのブロックの編集権を買う」に近く、買い手はブロックを自分で組むこともできるし、部分的に切り分けてinclusion preconfやexecution guaranteeにして売ることもできます。
Whole Block市場は最大64スロット先まで開く、とされています。Ethereumの1スロットは12秒なので、約12.8分先のブロック権利を先に売買できる計算です。
B. Inclusion Preconfirmations
Inclusion Preconfは「ブロックNに、指定量のガス枠までの取引を入れる保証」です。どこに入るかは固定ではなく、reversionの保証もない、とされています。この市場は“提案者が一次販売して初めて市場が生まれる”ため、Inclusion Preconfを空売りできないと明記されています。
C. Execution Preconfirmations
Execution Preconfは、Inclusionの上に「特定の状態や結果」まで保証するものとして説明されています。
D. Base Fee Futures
ETHGasは今後、「ベースフィー自体を取引する」構想も掲げています。ドキュメント上も“coming shortly”扱いで、少なくとも狙いはガスコストのヘッジです。トレーダー向けページでも、ボラティリティをヘッジする“upcoming Base Fee Futures”が明記されています。
confirmationの強制方法
1) 担保とスラッシング
ETHGasは、提案者がコミットメントを履行しなかった場合に担保がスラッシュされ、買い手へ分配される設計を明示しています。提案者は1ブロックあたり1 ETH程度の担保を推奨され、担保額は買い手側へブロードキャストされ、カウンターパーティーリスクを価格に織り込めるようにする、とされています。
2) EigenLayer AVSでの担保
担保はL1にETHをデポジットするだけでなく、EigenLayer AVSでネイティブステークETHをセキュリティとして差し出す選択肢も示されています。
3) 既存PBSフローに寄生する形のRelay
ETHGasのpreconfフローはPBSに近い側面があると説明されています。リレーがビルダーからブロックを受け、提案者がヘッダを署名してボディを受け取る基本構造は同じで、追加で「そのスロットのpreconf取引が含まれているか」をチェックします。提案者がETHGasリレーなど“認可されたリレー”に接続せずにヘッダへ署名すると、preconfを守れずスラッシュにつながる可能性がある、と書かれています。
Realtime Ethereum
ETHGasが掲げるReal-Time Ethereumは、最終的に「体感上、ブロックタイムをミリ秒化する」発想です。ただしL1の実ブロック生成そのものが50msになるわけではなく、外部市場とビルダーのコミットメントで「このスロットのこの瞬間に実行される」という確約を作り、RPC体験として配信する、という層が乗るという前提があります。ドキュメントでは、
将来スロットのWhole Blockが売買され
Realtime Agentがシーケンシング権を取得し
Realtime Block Builderへビルドを委任し
ビルダーはWebSocket Proxyへ“preconfirmed realtime blocks”を流しつつ
スロット終端では通常のPBSパスでL1ブロックをリレー経由で提案者へ渡す
という二重経路が説明されています。RPCプロバイダがそれを配信し、sub-100msの実行保証を可能にする、と主張されています。
Open Gasとは
一般に“gasless”には2種類あります。
1つはAccount Abstraction系の「送信時点でユーザーがガスを払わない」方式。
もう1つは「払った後でリベートや補助で実質無料にする」方式です。
ETHGasのOpen Gasは、後者のニュアンスが強く、ガス補助をプロトコル側が設計できる仕組みを押し出しています。
Open Gasをとおしてゼロコードのガス補助、ガスリベート設計、Gas ID、コスト見積りなどを提供し、最初の統合先としてEigenLayerやether.fi等が挙げられています。
dApp側にとっては、ガス補助コストの不確実性を下げる意味で、一定の価値があります。
ブロックスペースを事前に予約して確実に入れる
ベースフィーをヘッジして単価を固定化する
彼らはこの2つを同じインフラでつなぐことをビジョンしてあげています。
まとめ:
個人的には、out-of-protocolの実験としてかなり面白いと思います。が、同時に以下のような点にもウォッチしていく必要があるかもしれません。
confirmationが仮に今後破られたときに、誰がどの条件でスラッシュされ、買い手が本当に補償されるか
認可リレーや取引所部分の集中が、Ethereum全体のneutralityに今後どう影響するか
今後proposerの選出やPBSのメカニズムが変わったときに、今の設計がどのように調整されるか など
今後のETHGasの動向に注目です。
読んでくださりありがとうございました
by Keita, Fracton

