分散型ナレッジグラフを作るIntuition
こんにちは、FractonのKeitaです。
今回は個人的に好きなプロジェクトの一つであるIntuitionについて解説します。
FounderはEF出身のBillyで、Joseph LubinやConsensysから調達してます。
Intuitionはざっくりいうと「セマンティックで動的なナレッジグラフ」をオンチェーンに作るためのプロトコルです。この記事では、基本的にトークノミクス等のどうでもいい話は追わず、基礎的な仕組みとしてのデータモデルなどを扱います。。
1.Intuitionとは
Intuitionが作るナレッジグラフでは、誰がそう主張しているか、どのobjectがどのobjectとどのような関係性があるか、どれだけの根拠と評判があるかなどのあらゆる文脈の可視化を主に行います。
主に以下のような特徴的なポイントがあります(それぞれの詳細については後述します。)
あらゆる主張(claim)を、機械可読な知識グラフ(SPOトリプル)として表現する
そのclaimや、構成要素となるobjectに対して、参加者がシグナル(stake)を積むことで「信頼・確信・重要度」を動的に数値化する
→ 複数の主観(for/against)と重みを残したまま探索可能にする
AI Agentや人間、platformごとの評判のnetworkを誰でも、好きな範囲内で参照可能になる
2. データモデル
ここがIntuitionの核になります。(時間がない方はここだけ見てもらえれば重要な部分は掴めると思います。)
Atom
Atomはナレッジグラフの最小単位であり、個々のobjectを表します。ここでのobjectとは、人、AI Agent、組織、概念、識別子、URLなどの、参照可能な単位/主体を指します。
Triple
Tripleはsubject / predicate / objectの3つの種類のAtomで表現される一つの主張です。
このようなSubject–Predicate–Object(SPO)のトリプルによる表現は、RDF(Resource Description Framework)と呼ばれるW3C標準のデータモデルの中核をなす考え方の一つで、古くから計算機科学の世界で、世界のあらゆる事実や関係性を機械可読な形で表現するために使われてきました。(また、論理学の世界でもトリプル構造はごく一般的に使われる基礎的な概念です。)
RDF自体はデータモデルで、TurtleやN-Triplesなど複数の表記形式があります。本稿では説明を単純化するため、データモデルとしてのSPOトリプルにフォーカスします。(+後述するような経済レイヤーが付属してる点がcryptoならではの点です。)
以下に例を示します。
Subject: Alice
Predicate: works for
Object: Company X
→ 「Alice works for Company X」
直感的には「Atomsがobjectなら、Triples全体はそのobject間の関係性を表した、意味や主張の塊」と思ってもらって問題ないです。
ここで重要なのは述語の役割を果たしてるPredicateです。
predicateひとつひとつにIDを付与することで理論上、世界のあらゆる物事の関係性を表すことが可能になります。
しかしその際の問題として、以下画像のように、似た意味のpredicate(あるいは同一対象のAtom)が乱立すると、ナレッジグラフは簡単に断片化します。
Intuitionはこれに対してボンディングカーブとネットワーク効果で収束を促す設計にしています。
すでに利用とシグナルが集まっているカノニカルなidentifier / predicateに寄せた方が、将来の利用(クエリ等)から得られる価値配分の観点で有利になりやすく、結果として参加者が同じIDに収束しやすい、という思想です。
ちなみに、Triple自体を対象にしたメタ情報(時系列、根拠、誰が主張したか等)の付与、tripleそのものをobject/Atomとして扱うような入子構造も可能です。(これはごく一般的なSPOの特徴です)
AtomsとTriplesは、内容から決まるIDで参照されます。
Atom ID: Atomのdataをハッシュ
Triple ID: subjectId / predicateId / objectId をハッシュ
Signals
Signalsは、AtomsやTriplesに対して参加者がstakeする信頼、確信、関連性等の意味を表す重みです。(さっきのTripleやAtomに付属する動的なメタ情報のようなイメージ)
Signalの対象には賛成を表すFORのメインVaultと、反対を表すAGAINSTのカウンターVaultの二つが存在します。
3. オンチェーンの部分
オンチェーンの部分はざっくり以下のような構成要素で成り立ってます。
MultiVault
MultiVaultは、Atoms/Triplesの作成と、Vaultへのdeposit/redeem(賭けの出し入れ)を提供するコントラクトです。
depositで受け取るsharesはボンディングカーブの価格に依存し、既存のstakeが少ない初期ほど同じ$TRUSTでもより多くのsharesを得やすく、後から入るほど同じ量のシグナルに必要なコストが上がります。
ちなみにこのように時間を確信度に読み替えて、価格を変更するようなメカニズムは至る所で見かけるようになった気がします。(JokeRace V2など)
Tripleを作成すると、そのTripleには賛成(Positive)と反対(Negative)の2つのVaultが紐づきます。賛成側Vaultへのdepositは「その主張を支持する」シグナル、反対側Vaultへのdepositは「その主張に疑義がある」シグナルとして集計されます。
$TRUSTの役割
Atoms/Triplesへのシグナル(staking)での使用
ガスとして支払うネイティブトークン
Atom, Triple作成
基本的に$TRUSTはガスとstaking用途です。また、Atoms作成にネイティブ通貨での手数料支払いが必要になります。データ追加に固定のfeeを課すことでスパムコストを持たせる狙いです。
Intuition Network(L3)
Intuition Networkは、BaseにsettleするカスタムL3として構築されています。スタックはArbitrum Orbit(Nitro)を採用し、DAはAnyTrustを利用してます。
4. Usecase
IntuitionにはReality Tunnels(個人化された信頼レンズ)の機能が用意されてます。
この設計により、例えば次が可能になります。
「公式ソースのシグナルだけ見たい」
「自分が信用してる人やAi agentが評価してるものだけをみたい」
「一定以上の反証が出ている主張は除外したい」
「この特定の研究コミュニティの見解を優先したい」
共通のナレッジグラフを基盤にしつつ、個々の解釈は明示的にユーザー側で選択可能です。
Usecase:
このプロジェクトは理論上あらゆるデータを保存対象にできるのですが、founderはPodcastで特にAI Agentのcredibillity、agent同士の信頼度に基づく連携のための基盤としてのusecaseを強調していました。
実際にIntuiton主導で、AI Agent同士が協調・取引するAgent Economyの実現のため、AI Sovereignty Allianceという連合体(Collab.Land, Gaia, Lit Protocol, Nevermined等が参加)を設立しています。
5. 最後に
この記事を読んでいて、なんか既視感があるなと思った方もいると思いますが、FounderのBillyは初期のOpen Webの思想を実現することに本気です。
ここで扱ったtripleを0から集めるのはかなり骨が折れそうなので、最初のコールド問題をどのように解決するか、どのspecificなfiledに最初のSignalの流動性を集中させるかがkeyになると思います。(Signalが多くのAtomやTripleに分散しすぎると情報価値としての体をなさなくなるからです)
→その一環として、まずはtripleやAtomを集めやすい質問形式(使ってるwalletはなにかなどの答えやすいもの)での収集から始めているようです。
個人的に好きなプロジェクトのひとつで、Intuition上のbuilderへの支援もある程度手厚いので、何かappをIntuition上に作ってみたいなと思った方は気軽にご連絡ください。
読了ありがとうございました。
Keita, Fracton



