L2の分断を終わらせる「Ethereum Economic Zone (EEZ)」構想
こんにちは、Fractonのビニールです。
今回は、最近のEthereumエコシステムにおける最大の課題である「L2のフラグメンテーション(分断)」問題に対する強力な解決策として発表された、Ethereum Economic Zone (EEZ) について解説します。
EEZはEthereumメインネットと各L2を「同期的にコンポーザブル(synchronously composable)」にし、1つのEthereumとして機能させるためのL1<>L2フレームワークです。GnosisとZiskが主導し、Ethereum Foundationからの共同資金提供を受けて開発が進められています。
なぜEEZが必要なのか?
EthereumのL2スケーリング戦略は、トランザクションコストの低下とスループットの向上という点では大成功を収めました。しかし、その結果として新たな問題が生じています。それが「フラグメンテーション(分断)」です。
現在、各L2は独自の流動性、独自のブリッジ、独自のウォレット統合を持つ「孤島(walled gardens)」のようになっています。プロトコルはユーザーにリーチするために5つのチェーンにデプロイし、5セットのツールを統合しなければなりません。ユーザーはそれらの間を移動するために、時間とコスト、そしてリスクを伴うブリッジを利用する必要があります。
Gnosisの共同創業者であるFriederike Ernst氏は、この状況を次のように的確に表現しています。
「Ethereum doesn’t have a scaling problem. It has a fragmentation problem. The EEZ is designed to do the opposite. One Ethereum, not a hundred islands.」(Ethereumにはスケーリングの問題はありません。フラグメンテーションの問題があるのです。EEZはその逆を行うように設計されています。100の孤島ではなく、1つのEthereumを。)
各L2がEthereumから価値を引き離すのではなく、Ethereumを拡張する本来の姿を取り戻すために、EEZは構想されました。
EEZの仕組みと特徴
EEZの最大の特徴は、同期的なコンポーザビリティ(Synchronous Composability)の実現です。EEZロールアップ上のスマートコントラクトが、メインネットや他のEEZロールアップ上のコントラクトを「1つのトランザクション内」で呼び出し、レスポンスを受け取って実行を完了できるということです。これはアトミック実行(すべて成功するか、すべて失敗するか)を保証します。
これを可能にする技術的基盤が、Jordi Baylina氏(Circomの作成者でありzkEVMの最前線で活躍)が率いるZiskのリアルタイムzkVM証明スタックです。プロキシスマートコントラクトとUnified State Root(統合状態ルート)を用いることで、ロールアップ間の状態をリアルタイムに同期します。
また、EEZはEthereumファーストの設計思想を貫いています。新しい独自トークンは発行せず、ETHをデフォルトのガストークンとして使用します。これにより、Ethereumのセキュリティと決済レイヤーとしての役割をそのまま継承します。
ステークホルダーへの提供価値
EEZがもたらす価値は、エコシステムの各アクターにとって非常に明確です。
To Ethereum L1
ロールアップがEthereumと競合して価値を奪うのではなく、真に拡張する存在になります。ETHは引き続きガスおよび決済トークンとして機能し、真実の源泉(source of truth)であり続けます。
To プロトコル
複数のチェーンで同じスタックを再構築・維持する必要がなくなります。一度デプロイすれば、共有流動性とコンポーザビリティにプラグインでき、Ethereumのフルセキュリティを継承しながらEEZ全体にリーチできます。
TO Dapps / ユーザー
ユーザーは「どのチェーンにいるか」を意識する必要がなくなります。資産、アイデンティティ、ポジションがどこでもシームレスに機能し、ブリッジやフリクションのないUXが実現します。
誰が作っているのか?
EEZは特定の企業が所有するプロダクトではありません。スイスに設立された非営利法人「EEZ Association」のもと、完全にオープンソースの公共インフラとして開発されています。Gnosisは2015年からEthereumインフラ(Safe, CoW Protocol, Gnosis Chainなど)を構築してきた実績があり、Ziskは最先端のZK証明技術を提供しています。さらに、Ethereum Foundationが「credibly neutral(信頼できる中立性)」な共有インフラとして資金を提供しています。
ローンチメンバー(EEZ Alliance)には、Aave, Safe, CoW Swap, Flashbots, Nethermind, Centrifugeなど、Ethereumエコシステムを代表する強力なインフラチームやプロトコルが名を連ねています。
考察と展望
2024年のDevcon SEAで、GnosisのMartin Köppelmann氏が「Ethereum Needs Native L2」という講演を行い、ZK証明ロールアップが同期的に読み書きできる未来を提唱しました。当時、BanklessのRyan Sean Adams氏がこれを「Ethereum 3.0ビジョン」と称賛していましたが、それがついに具体的なフレームワークとして動き出したわけです。
これが実現すれば、Ethereumは分断されたL2の集合体から、真の意味で「1つの統合された経済圏」へと進化し、圧倒的なネットワーク効果を取り戻すことができるかもしれないです。今後数週間のうちに、技術アーキテクチャの詳細やパフォーマンスベンチマークが公開される予定とのことなので、楽しみに待ちましょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!



